2021年3月19日

AIやIoTを活用したインフラの老朽化対策とは?

イギリス、アメリカを始め先進国が抱える問題の1つにインフラ老朽化問題があります。日本はこのインフラ老朽化問題に加え少子高齢化による人材不足などの問題も抱えています。そこで国土交通省は官民が一体となってこの問題を解決すべく新しい取り組みを始めました。民間企業が参加することでAIやIoTを活用した技術開発が活発になっています。この記事では、インフラの老朽化対策についてご紹介したいと思います。

インフラとは?

インフラとはインフラストラクチャーの略語です。infrastructureはinfra(下部の)structure(構造)を意味します。構造を下支えするもの、つまり生活や企業の基盤となる設備や施設をさします。車や電車があっても道路や線路がないと車を走らせることも、多くの人が電車を利用し移動することもできませんよね。この場合車や電車がinfraにあたり、structureが道路や線路、信号や橋、トンネルとなります。

インフラはジャンルごとにわけられ、車や電車など交通に関するものを交通インフラ、上下水道に関しては水道インフラ、電話網や通信ネットワークを通信インフラ、ネットワークの構築に関するものをITインフラ、宿泊施設や観光案内施設の表示、観光従事者を観光インフラと呼んでいます。

また道路、港湾、空港、上下水道や電気・ガス、医療、消防・警察、行政サービスなど経済活動を支える基盤全般をまとめて社会インフラと呼んでいます。インフラは開発、運用、改良、運用、点検、保守といったメンテナンスが繰り返し必要とされ、それを十分に整えていくには人材、時間、労力、膨大な費用が必要となってきます。

インフラ老朽化の現状について

社会インフラ老朽化が問題となっています。日本は1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万博に向け1950年頃から建設ラッシュが始まりました。例えば橋について考えた時、1960年から1970年の1年間だけで1万本以上の橋が建設されました。2021年現在、日本には70万本以上の橋が作られていますがそのほとんどが1980年以前に作られたものです。

1980年以降の橋や建物は耐久100年を考え建設されていますが、資材が不足していた第二次世界大戦から戦後にかけての橋の寿命は30年、一般的な寿命は50年と考えられています。長さが15m以上で老朽化を迎える橋の数は、2021年には28%、2031年には60%となります。

2021年の時点で100ある橋のうち28は寿命を迎えるということになります。高度経済成長期に建設した建物が一気に老朽化を迎えることになるのです。橋だけ取り上げてみてもこれだけの数の老朽化に対応していかなくてはなりません。こういった現象が、病院、学校、道路、建物全般に起こっています。

老朽化の原因は、金属やコンクリートなどの経年劣化がありますが、それ以外に地震や津波、台風などの自然災害、道路の場合ですと建築時の想定をはるかに上回る交通量によるコンクリートの破損、海辺近くに起こりやすい塩害(海水や除雪剤に含まれる塩分がコンクリートの内部に浸透し、骨組みとなる鉄筋を腐らせてしまう事)など環境からくるもの、そもそも設計時に問題があるにもかかわらず建設してしまったため老朽化が早まっているものとさまざまです。

改築や改修が必要になった建物や道路はそれをおこなう時期や方法、予算、迂回路の設置など事前に綿密な計画をたて、改修工事をおこなうことになります。

インフラ老朽化は人命に関わる大切な対策

インフラ老朽化によりなんらかの事故が発生してしまった場合、人命に関わる可能性があります。例えば下水道管の損傷による道路の陥没、鉄筋がさびて膨張したために病院や学校の壁のコンクリートがはげ落ちてしまう事故、2012年には中央自動車道の笹子トンネル事故がありました。

この事故ではトンネル内の天井板が落下し走行中の車が事故に巻き込まれ9名が死亡しました。インフラ老朽化への対策の第一は事後ではなく予防保全が重要なカギとなってきます。

政府はインフラ老朽化対策として国土交通省を主体としたインフラメンテナンス国民会議を開催しました。この会議は、社会インフラを国民全体の問題ととらえ産官学民が協力し合い解決策を模索していくというものです。PPPという言葉を聞いたことがありますか?

PPPとはパブリック・プライベート・パートナーシップという形態で、官と民間がパートナーシップを組んで社会問題に取り組むというものです。施設や設備は官が保有したまま設備投資や保全などを民間企業へ任せるものです。PPPという形態をとることにより民間企業が得意とする分野を活用してインフラ老朽化対策を早急に進められるように取り組んでいます。

少子高齢化社会を迎える日本の課題の1つである人材不足を補うためにはIoTやAIを活用した技術は必要不可欠なのです。

政府の対策と企業の取り組み実例

IoTやAIをインフラ老朽化のために利用するとどういった事ができるようになるのでしょうか?2014年、政府は自治体に橋やトンネルの定期点検を義務付けました。具体的な内容は5年に1度、足場や高所作業車を利用して近接目視(手が届く範囲まで橋に近づき検査する方法)で点検、必要に応じて手で触って損傷を確認する触診や音の違いによって異常を発見する打音検査もおこなう事というものです。検査結果は4段階に区分し記録しなくてはなりません。

しかし、自治体は管理する橋の数が多すぎることや、点検ができる専門知識、実務経験のある作業員の不足、予算不足のため実情は遠望目視(徒歩で橋やトンネルを移動しながら双眼鏡を利用して損傷状態を確認する点検方法)で対応しているという事もあります。限られた予算内でインフラ老朽化対策をとらなくてはならないので、自治体としてもやむを得ない状況のようです。

5年に1度の点検義務が長期にわたって実行可能な業務としていくには、どうしても点検の効率化、省力化が必要となってきます。千葉県君津市では市の職員がドローンを利用した映像の撮影で近接目視と同等の点検をおこなうようにしました。これにより命綱がないと点検ができないような場所にある橋も近接目視と同じ点検ができるようになり、市の職員による作業のため費用も抑えられるようになりました。

自治体と協力してインフラ老朽化対策の点検業務効率化につながるようIoTやAIを駆使したシステムの開発に力を入れる民間企業も増えています。例えば橋の状態を振動によって監視するセンサーを開発した企業があります。

こちらのシステムは橋に周波数を流すことにより得た振動をデータとして分析することで常時橋の状態を監視できるシステムです。IoTとセンサーを活用して作られました。他にはドローンで収集した撮影画像と高精度な位置情報を紐づけ、3Dモデルを作り微妙なずれや誤差から内部の欠陥などを自動で検知できるシステムを開発している企業もあります。

都市部は膨大な数のインフラ構造物が密集しています。こういった状況を一括で点検する方法として衛星レーダーを使ったスクリーニング検査ができるようなシステムも開発されました。2次元微小変位解析技術により都市部においてもミリ単位で変異を解析することができます。例えば地盤沈下を起こしやすい土地に建てられた構造物の異変を察知できるようになり、構造物のインフラ予防保全の効率化に役立っています。

AIを利用したインフラ老朽化対策

新潟市では舗装損傷診断システム、マルチファインアイを利用しています。マルチファンアイとは先進的なAI技術を利用して低費用で短期間に道路の損傷を点検できる技術です。AIへの学習にはディープランニング技術が使われています。事前にお手本となるひび割れやわだち掘れの画像6万枚をAIに学習させ、自ら道路の損傷を判断し国土交通省が定めた3つの区分に診断します。

点検作業はとても簡単で、車のフロントガラスに市販のビデオカメラを搭載し、時速70キロ以下で走行するだけです。カメラに搭載されたGPSと記録した動画を同期し解析されたデータはパソコンでグラフとして見られるようになります。このシステムを使うことでどの損傷から修理すべきかが一目瞭然となります。

今まで道路を点検するだけで数百万規模の費用がかかり、道路修理に費用が回らないというのが自治体の実情でしたが、このAIシステムにより3分の1の費用で点検ができます。低コストのうえ、測定時に道路を通行止めせずに済むというメリットもあり、実用性が高いと評価を得ています。

インフラ老朽化問題は日本だけの問題ではありません。アメリカ、イギリスなど先進国は同じような問題を抱えています。特にアメリカでは年間約24万本もの水道管が破損し、問題となっているのです。

この多くのアメリカの水道管破損データをAIに機械学習させ日本の水道事業に適用するように独自に開発する企業がでてきました。このアルゴリズムを利用することで水道管の実劣化の予測が可能となります。地震が多い日本では古い水道管の破損は以前から問題視されており、点検や補修は積極的におこなっていました。そのため水道管破損によるトラブルは年間数千件ほどしかありませんでした。

しかし、今後人口減少や節水型タイプの水道設備の普及により水道料金による収入は減ることが予想されています。点検や補修にかけられる費用が年々減少しているのです。これから先、日本においても水道管の破損が問題にならないとはいえないのが現状です。

水道管の補修や更新は設置された年数で管理しています。水道管は地下に埋められているため実際に目で見て、破損の状態を確認し、更新するかどうかを判断するというやり方はできません。実際に配管を更新してみて、破損個所が特になく更新の必要がなかったという場合ももちろんあります。

配管の腐食は、経年劣化だけでなく環境にも大きく左右されるためだと考えられています。地下に埋められている配管の交換適正時期が測定できるということはこういった無駄な工事を減らすことができ、大きなコスト削減につながるのです。そこで6つの水道事業体でこのアルゴリズムを使った実証実験が検証されました。そしてその有効性が確認されたのです。

このサービスはさらにガス配管の劣化の予測や電気設備、通信、電力、プラントの劣化予測など多方面にわたって応用が可能と考えられ実用化に向け研究が進められています。

インフラの老朽化対策は長期戦

インフラ老朽化対策は先進国が抱える問題の1つです。特に日本は今後少子高齢化により人材不足、国の収入源の不足が予測されます。

そのさなかで増え続けるインフラ老朽化問題ということを考えると一見問題が山積みのように思えてしまいますが、官民一体となって知恵を出し合い、IoTやAI技術を駆使し、限られた時間とコストの中、安全な国としての日本を継続できるよう地道な開発努力が今後も継続的になされていくことになります。

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