2021年2月22日

設備保全とは?設備保全の種類と基本的な考え方を解説

モノづくり大国と呼ばれる日本では工場の稼働状況が人々の生活や経済を大きく左右すると言っても過言ではないでしょう。製造業の要である工場が安定して稼動するためには、長期間に渡って設備が正常に動作し続ける事が重要です。そして設備のメンテナンスや管理は「設備保全」と呼ばれる考え方の下で行われています。今回はこの設備保全について基本的な考え方や種類について詳しく見てみましょう。

設備保全の土台となる考え方

設備保全の概要

設備保全とは簡単に言えば「工場で稼動する機械類や建物自体を安心・安全に利用するために適切に管理点検する」という考え方です。一般的にモノづくりにおいて重要な要素は「Man(作業員)」「Material(材料)」「Method(方法)」「Machine(設備)」の4つであると言われています。設備保全はこのうちの「Machine」に関するものであり、生産拠点の正常な稼動において重要な役割を果たしています。工場で稼動している設備は高価なものが多く、万が一故障した際にすぐに代替品を用意出来るとは限りません。場合によっては納期が遅れてしまうなど、大きなトラブルに発展する可能性もあります。上記4つはどれもモノづくりにおいて欠かせない要素ですが、Machineは万が一不具合や故障が発生した際のリスクが大きいため適切に管理するための設備保全が特に重要視されているのです。

保守・メンテナンスと設備保全の違いとは

設備保全とよく似たものに保守・メンテナンスという考え方があります。この2つは「設備を適切に管理する」という点では共通しており、ざっくりとした意味では同じと言っても良いでしょう。しかし設備保全は「設備が故障しないように管理する」という側面が大きいのに対して、保守・メンテナンスは「故障した設備を元の状態に戻す」といった場面で用いられる場合が多いです。また、設備の「安全」に利用する事をメインとしているのが設備保全であり、設備を「正常に動作させる」というのが保守・メンテナンスの主な考え方であるという点も留意しておきましょう。

設備保全の目的

設備保全の考えに基づいて機器の安全を確保するのは、最終的に工場で生産する製品の「QCD」を維持または向上させるという事が目的です。QCDは「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」をまとめた略語であり、モノづくりにおいて基本的な考え方となっています。設備保全においては設備の「状況把握」「長寿命化」「トラブルによる停止時間の短縮」「突発的な事故防止」が重要なポイントです。これらを実現する事は即ち製品のQCDを維持・向上させる事となり、顧客満足度や業績アップに繋がっていきます。

設備保全が重視される背景

日本では少子高齢化の煽りを受ける形で、労働人口の減少があらゆる業界で問題視されています。対応策は業界によって様々ですが、製造業においては製造プロセスの機械化・オートメーション化によって少ない従業員数でも効率的に製品を作り出せる体制が整えられるようになりました。そのため生産設備の数も増加し、適切な設備保全によって安全かつ正常に動作させ続ける事の重要性が高まったのです。

設備保全の種類 1.予防保全

異常やトラブルを防ぐ「予防保全」

設備保全には大きく分けて3つの種類があり、その中で工場のルーティーンワークとして組み込まれるのが「予防保全」です。予防保全では設備に異常が発生しないようにするために、定期点検やメンテナンスを行います。設備を常に安全かつ正常に稼動させておくために、消耗した部品は不具合が出る前に交換するのが基本です。また、予防保全は取り組み内容によって以下の2通りに枝分かれします。

時間計画保全

工場内の設備を正常に稼動させておくには、定期的に消耗の激しい部品や交換が必要な箇所をメンテナンスするのが理想的です。この取り組みを実現させるための仕組みは予防保全の中で「時間計画保全」と呼ばれています。時間計画保全では経験則や知見を基にして、工場内の各設備で定期的な交換が必要な部品をリストアップして準備しておくのです。交換時期は予め決めておき、周期が来たら部品の消耗が少なくても交換します。「比較的コストがかかる」「部品の在庫を確保しておく必要がある」という注意点もありますが、設備を常に安全に稼動させるためには効率的かつ確実性の高い方法です。

状態監視保全

設備を点検する際に消耗の激しい部品や故障箇所をチェックし、必要に応じて交換や修理作業を行うのが「状態監視保全」です。チェックリストの作成や判断基準の共有化など、事前準備や周知しておくべきポイントは多いと言えます。こまめな点検が重要になるため比較的点検回数は多くなりがちです。こうした手間がかかる一方で、交換・修理が必要な部品をピンポイントで管理出来るのでコストは安く抑えられる傾向があります。

設備保全の種類2.予知保全

センサーやデータを用いる「予知保全」

設備の部品や重要な稼動箇所にセンサーや専用ツールを取り付け、稼動状況や消耗状態を把握しながら必要に応じてメンテナンスや部品の交換を行うのが「予知保全」と呼ばれる方法です。場合によっては「予兆保全」と呼ばれる事もあるので併せて覚えておきましょう。時間計画保全と予知保全はよく似ています。しかし前者が人間の手作業によるチェックを主としているのに対して、後者はセンサーやツールによるデータ収集による管理が行われるという点に明確な違いがあるのです。予知保全はセンサーやツールを導入するための初期費用やランニングコストがかかる点には注意が必要ですが、データ管理によってより一層正確な設備保全が実現可能となるメリットもあります。

予知保全は多くの企業から注目を集めている

現代社会では様々なものが情報化され、あらゆる分野で業務のIT化が進んでいます。こうした時代の流れは、工場を取り巻く設備保全においても例外ではありません。IoTやAIを活用した予知保全の業務サービスを提供する企業も増加傾向にあり、既に導入している工場も少なくありません。適切なタイミングとメンテナンス内容を正確に把握出来る予知保全は、長期的な目で見ればコストパフォーマンスに優れていると言われています。生産拠点や設備台数の多い企業では、予知保全システムの導入によって期待出来る恩恵が大きいのです。

設備保全の種類3.事後保全

異常発生に備える「事後保全」

故障・消耗した、あるいはパフォーマンスの低下が著しい設備に対して修理や部品交換を行うのが「事後保全」です。予防保全や予知保全と比べると、保守・メンテナンスに近い取り組みであると言えるでしょう。事後保全ではまずトラブルの原因を究明する必要があり、大掛かりな設備や複雑な構造の機器になると原因を突き止めるだけでも時間がかかる事もあります。すぐに対処出来るトラブルであれば問題ありませんが、部品の交換が必要な場合には取り寄せが必要になる場合も多いので注意が必要です。対応はやや遅れがちになるものの、コスト面では必要最低限に抑える事が出来ます。パフォーマンスの低下や機能停止が起きても致命的な事態にならない設備に適用するのが一般的です。また、事後保全はアクションを起こすきっかけは以下の2つに細分化されています。

「機能停止型故障」と「機能低下型故障」

設備がトラブルによって完全に機能を停止してしまう事を「機能停止型故障」、設備は稼動しているものの明らかなパフォーマンス低下が確認されている状態は「機能低下型故障」と呼ばれています。機能停止型故障は工場の生産体制に著しい影響を及ぼす事が予想されるため、迅速な対応が重要です。緊急保全と呼ばれる事もあるので覚えておきましょう。場合によっては納期も遅れてしまうので、営業部や上層部と復旧の目処を協議しながら生産スケジュールの再設定や対応策・応急措置などを検討する必要があります。

設備保全を行う際の注意点

情報共有の徹底が重要

設備保全においては各部門間における情報共有を徹底しておく事が大切です。特に事後保全の場合には製造現場でトラブルが発生したとしても、交換する部品の発注や修理業者への依頼は他の部門が担当しているケースが少なくありません。例えば緊急を要する事態であるにも関わらず、それが担当部門に伝わっていなければ部品の発注や業者への依頼が後回しになってしまう可能性も0ではないでしょう。納期がずれ込む場合は取引先への連絡も必要になるため、自社の営業部門と連携を取らなければなりません。円滑なコミュニケーションと情報共有を徹底する事で、事態を悪化させてしまわないように努めましょう。

個人の判断力・スキルによって差がないようにする

1人の従業員がすべての設備保全業務を担当するというのは稀です。一般的には複数人のチームや担当者を設けて交代制で保全業務にあたります。そのため、交換やメンテナンスが必要なる明確なラインや報告ルールを定めておかなければ、従業員個人の判断でバラつきが生じてしまうのです。また、工場で稼動する設備は専門性が高いものも多く、部品の交換ひとつを取ってもある程度のスキルが必要になる場合があります。業務の俗人化を防ぐために、すべての担当者が保全業務をこなせるように社内教育をしっかり行う事も重要なのです。

コスト管理は入念に

設備保全はどのタイプでもある程度のコストが必要になります。例えば予防保全では定期的に部品を仕入れるコストが、予知保全ではセンサーやツールを導入するための初期費用やランニングコストが大きなポイントです。事後保全においては、故障の度合いによって部品代や修理費が高くつくケースも少なくありません。設備保全のコストは決して安くはないため、生産コストやその他の財務面に影響を及ぼす可能性があります。保全コストは余裕を持った上で、適切に管理運営していく意識が大切です。

設備保全は現代の製造業におけるキーポイント

製造工程の機械化が進む現代において、設備保全は欠かせない取り組みと言っても過言ではありません。AIやIoTの活用によって生産環境は効率化が進んでいますが、重要なのはそれを安全かつ正常な状態で稼動させ続ける事です。従業員教育・管理台帳作成・情報共有の徹底・コスト管理など設備保全のためにやるべき事は少なくありませんが、企業の成長にとって重要な役割を果たすポイントでもあるのでしっかり取り組んで行きましょう。

お気軽にお問い合わせください

不明点やご相談、デモの依頼なども
お気軽にお問い合わせください